ARTにおける付加的療法
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子宮鏡
ARTの際に子宮腔内の病変を発見することで、治療成績の向上が期待されましたが、大規模な臨床試験では有効性が確認されていません。従って、 子宮鏡を行うことに有用性はないと考えられます。
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アスピリンの投与
比較試験では妊娠率を改善する根拠がなく、流産率の改善についても有用性は認められておりません。
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ステロイドの投与
妊娠率の面からみて、有用性が示されておらず当院では行っておりません。
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多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)療法
PRPを子宮内に注入することにより、子宮内膜の環境を改善させることができるのではないかと考えられています。大規模な比較試験がありませんが、今後期待できる方法の一つと考えられます。当院では血小板由来因子を抽出・濃縮して凍結乾燥したPFC-FDを使用しています(¥150,000)。
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子宮内膜スクラッチ
子宮内膜スクラッチは子宮内膜に損傷を与える方法で、ART施行前に行うことで、着床を促すのではないかと期待されました。 しかし大規模な比較試験では有用性は認めらず、逆に感染等のリスクが問題視されています。
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ERA (Endometrial Receptivity Array test)
着床期の子宮内膜を調べ、遺伝子の発現の状態を指標に胚移植を個別化し、それぞれの女性の着床期ウインドウに合わせて胚移植が行われます。 現在のところ大規模な比較試験がなく、有効性を示す根拠はありません。当院では希望される方のみに行っております(¥95,000)。
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hCG子宮内注入
胚移植前の子宮腔内へのhCG注入により妊娠率の向上が期待されています。500単位以上のhCG注入により、臨床的妊娠率の向上が報告されています。評価は確立していませんが、安価にできる方法でもあり、検討する余地があります(¥5,000)。
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PGT-A
正常染色体の胚を選別し移植することによって、妊娠率・生児出産率が高まることが期待されましたが、現在のところ明らかな向上は見られず、流産率の低下も認められていません。現時点では、胚の選別のメリットは胚の生検によるダメージにより相殺されていると考えられます。有用性の評価にはさらなる検討が必要です。
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精子DNAフラグメンテーションテスト
精子の質を調べることにより、治療成績の向上が期待されていますが、検査方法が信頼性に乏しく、ルーチンに治療の参考にすることは現時点では勧められていません。当院では希望される方のみに行っております(¥9,000)。
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高度精子選別法
遺伝的に健全で成熟した精子を選別することにより、ARTの成績を向上させようとする方法です。様々な方法が報告されていますが、大規模な比較試験ではいずれも成績の向上は報告されていません。有用性の評価にはさらなる検討が必要でです。